なぜバグダッド・カフェが好きかって?
バグダッド・カフェ 完全版 [DVD] | Amazon.jp
|買ってよかった旧版。
バグダッドカフェの魅力は以下の点にある。
・前衛的な色彩が美しい。
・ミニマル。狭い範囲内で物語が呆気なく完結。
・みんなタルそう(これぞ娯楽!)
上記はまあいい。一番注目したいポイントは、公開時・DVD・ディレクターズカット・完全版と時代を超えて改変されたいくつかの映像が存在する。という点である。
私が持っていたのは2012年発売の『バグダッド・カフェ完全版』というやつで、デジタルリマスターされた極彩色な空の青や砂漠の黄色が特徴なのですが、鑑賞しながら画面のアスペクト比がずっと気になっていました。
左は1994年再公開時の完全版を収録、と書いてあります。ちなみにイマジカ。
で、今回買ったのは右の1998年発売の日本コロムビアの完全版。
説明書きいわく「今回リリースされたこのDVDは、1989年に日本の劇場で公開されたバージョン(=アメリカ・バージョン)ではカットされていた17分間を復元したヨーロッパ公開バージョンです.」だそう。
上の完全版104分より長めの109分となっています。
上の完全版104分より長めの109分となっています。
|問題のアスペクト比。
『バグダッド・カフェ完全版(12'発売/デジタルリマスター)』
ビスタサイズ[16:9]
『バグダッド・カフェ完全版(98’発売/デジタル処理なし)』
スタンダードサイズ [4:3]
赤がビスタで緑がスタンダード(アナログテレビのアス比とほぼ同じ)。
これ。このスタンダードサイズで観たくてわざわざ2本目のバグダッドカフェを買いました。
映像がどこでカットされてるとか、そういうのはどうでもいいんです。
ただ、私が知ってる完全版の極彩色が旧版では全く違う色だったとか、映画のサイズが時代とともに変わり、デジタルニューリマスター版のために監督がお直ししたせいで見切れてしまった映像よりかは、旧版の生々しいバグダッドカフェを観たかった。
アスペクト比を現代バージョンに合わせるためにどれほどの映像が失われたか。頭の上が切れてたり、人物が妙に画面に近いの、おかしいと思ってたんですよ。リマスター版(元から持っていたほう)の映像はこちら。
旧版では頭部がちゃんと映ってる。
ビスタサイズにトリミングするっていうことは上下の映像は画面外に消えてしまうってことです。
リマスター版では物語の最初に映っているトンネル効果も見切れていますよね。拡大したぶん映像が荒くなるし、画面の大きさを合わせて良いことはあんまりないわけです。
リマスター版では物語の最初に映っているトンネル効果も見切れていますよね。拡大したぶん映像が荒くなるし、画面の大きさを合わせて良いことはあんまりないわけです。
今回スタンダードサイズを手にいれてとてもホッとしています。
色味が全然違うし、見切れている場面はもうありません。
色味が全然違うし、見切れている場面はもうありません。
上:リマスター版 下: 旧版
映像はもちろんデジタル処理されたやつの方がクリアでいいけれど、やっぱり今まで観ていたのは別のバグダッドカフェ。現代に追いつこうとして失ったものの多さよ。
デジタルとアナログには大きな壁があると思っています。決定的な違いは、「機微」なんじゃないかな。
誰が撮っても美しくなる母体のもとで撮るデジタルと、技術やセンスで美しさまでもっていくアナログとでは、その意味も力の見せ所もきっと変わる。
とにかく霧が晴れたようなとても良い気持ちである。
映像の改善が必ずしも良い方向に向かうとは限らないのだな。