『ル・アーブルの靴磨き』私服の舞台


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  • もう、いつのだよっ!てくらい前に書いてそのままだった記事を載せます。放置ごめんなさい、そして"movie"カテゴリのみ購読されている方々が多く、本人もそのつもりで書いているので嬉しく思っています。この場を借りて、ありがとうございます。


    |チェス駒の人々

    さて、今日は『ル・アーブルの靴磨き』の話。
    カウリスマキの映画といえば、演じる人間がまるでチェスの駒になったような、下にグリッドが見えるような完璧な配置と画面のレイアウトで有名(私の中だけ)。俳優はみな少し感情を抑えた演技をしてるのがわかる。無機質な演技とでもいいましょうか。




例えていうならば… 舞台セットの上に天の神様がいて、演者は与えられた動作やセリフを機械的に言わされている感じ。そう思いながら見終わり、特典映像の2人の俳優のインタビューを見たら主演の彼(マルセル)は演技について、「あえて抑えた演技をしてくれと監督に言われた。とてもかしこまった言葉遣いで観客にとってはそのやりとりに違和感を感じることと思うが、それが監督の狙いだ」という話をしていた。





|裏も表もない淡白さ

この発言から、カウリスマキが監督する映画は役者に任せる部分が少ないのだなと分かったし、文学的なセリフから感じる堅い空気は意識的なものなのだと知り意外だった。だってみんなよそよそしい雰囲気で、役者同士はもしかしたらこの作品に関わる仕事外であまりコミュニケーションとってないのかもしれない!?なんて妄想までしてしまったから。
あと、この映画を観るときは日本語吹き替えはあまりおすすめしません!個人的に。以下箇条書き。


  • 彩度の高い小物たちと、その上に暗めのフィルターをかけたような画面の構成。
  • 人の表情ははっきり見えるのだけど、その表情から感情を汲み取るのは難しいかも。
  • 漂う哀愁とフランスという国の背景。けれども、人との交流がまんべんなく描かれていることもあって寂しくはない。
  • 水の中でそんな長時間待ってたら寒いだろう。。
  • これはラブストーリーでもあるのだけれど、恋愛のやりとりさえとてもたんぱくだ。愛の物語には違いないんだけど‥これがカウリスマキの作風なのかもね。どこか客観的な視点があるっていう。
  • 最後の桜が風に揺れる場面が本当に美しい。


まさに ’劇場’ で観たいそんな映画。


カウリスマキが描く画面の中には常に移民の人々が出てくるのがいい。多様な国籍と、多様な立場の人々の中で進行していくから単純な物語も一筋縄ではいかない。そこには観客への問題提起になりそうな場面がいくつかあって、毎回面白く観ているのです。
幸せだけじゃない映画、不幸かと思ってたけど幸せもあった映画、と彼の作品はまるで一枚の絵画みたいに味わい深い。
コメディ色もあり、哀愁もあり。そのメリハリの付け方がさすがカウリスマキ!と言いたくなる。
レニングラードカウボーイズも大人のコメディだったなぁ。たんぱくという言葉がピッタリだった…(笑)ただ、監督自身はたんぱくな人ではもちろんなく、たぶん緻密な計画をたてるのが得意でユーモアがある人、だと思うの。



このブルーが好きです。



ー2015/04/13 19:31



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